こんばんは。新宿区議会議員の伊藤陽平です。
今日のテーマは、新宿区議会でも活発に議論が行われている「ふるさと納税」について。
就職や進学を機に引越しをされる方は多くいらっしゃると思います。
仕事のある都市部に人口が集中することになりますが、ふるさと納税は自分のふるさとに納税(寄付金税制)できるようにとスタートしました。
しかし、「ふるさと」という定義が曖昧で、納税先はどの自治体でもOKです。
また、2,000円を超えた額が税額控除されるという仕組みです。
そして、ふるさと納税を行うと、話題の返礼品を受け取ることができます。
つまり、実質2,000円の手数料を支払うことで、どちらにしろ支払わなければならなかった税金を用いて買い物をすることができるようなものです。
返礼品は自治体ごとに様々で、特産品の肉、鰻、お酒や、そしてなぜかパソコンやタブレットまで(!?)あります。
私は制度を利用する予定はありませんが、ふるさと納税のポータルサイトは眺めていると結構おもしろいです。
ただ、当初はふるさとへ納税するということが目的だったはずですが、返礼品合戦に勝てればなんでもありという状態になってしまったように感じます。
これは、ECサイトで税金で買い物をするような感覚になってしまう納税者を生み出すことにもつながりかねません。
ふるさと納税では、納税先として選ばれた自治体が恩恵を受けることになりますが、返礼品合戦に敗れた場合も、ふるさと納税による減収の75%は地方交付税で補填されることになるため、競争に参加するインセンティブがあります。
一方で特別区などの不交付団体はダイレクトに影響を受けることになります。
新宿区では28年度は6億円以上のマイナスです。
待機児童など都市部に特有の課題もあるため、不当に税のあり方が歪められるべきものではありません。
そして、地方交付税で支出するということは、結局のところ、国の財政に影響を及ぼします。
つまりふるさと納税でダメージを受けた不交付団体は、減収するだけでなく、地方交付税のツケまで支払うことになります。
ふるさと納税は、食うか、食われるかの世界で、何もしなければマイナスを受け入れることになります。
新宿区も本気を出して返礼品をそろえ、ふるさと納税にガッツリ参入するべきだという意見もあります。
全国トップクラスのブランドを確立している新宿区には、全国的な競争に勝ち抜ける資源が溢れているため、勝算もあるでしょう。
ただやはり、そもそもふるさと納税は地方税のあり方を歪めるものであり、見直しが必要です。
また、地方公共団体が行う地方創生の取組に対する企業の寄附「企業版ふるさと納税」の創設に関しても、区財政に影響を与えることになります。
東京都内の寄付先はありませんでした。
本当にニーズのある事業であれば、企業版ふるさと納税などに頼らず、収益を生み出しながら事業として成立させた方が街にとってもメリットがあります。
地方創生の名のもとに本当に効果が出るのか理解に苦しむ制度が増えてしまうのは、根本的な解決策になるとは言えず、こうした制度のあり方についても見直すべきです。
—
ふるさと納税を通じて、地域の魅力を発掘し、PRに成功した自治体も出てきたというプラスの面もあります。
本気になれば活性化する自治体の可能性についても考えさせられました。
しかし、ふるさと納税のようにWeb上で返礼品を選んでもらう程度の競争では、根本的な問題解決にはなりません。
地域で魅力的な産業を育て、住民の意思により居住することを選択をしてもらえるよう、まちづくりに取り組んでいく必要があります。
それでは本日はこの辺で。