改めて、インクルシーブ教育と特別支援教育(インテグレーション)の違い

先日の代表質問では、インクルーシブ教育について質問させていただきました。

本定例会では私以外の議員でも質問している方がいらっしゃいました。
教育委員会も熱心に取り組んでいますし、私が議会に入る前から質問をされている議員もいらっしゃいました。
もはや私が何もする必要はないくらい広まっていく兆しが見えてきて嬉しく感じています。

しかし今回の議会を通して、インクルーシブ教育は特別支援教育と同じようなものだと認識されている場合もあることを改めて感じました。

議会での質問と答弁をご紹介し、改めてインクルーシブ教育の根本的な考え方についてご説明できればと思います。

議会の質問と答弁は以下の通りです。

伊藤 次は、インクルーシブ教育についての質問です。
改めてインクルーシブ教育についてご説明をさせていただきます。よく特別支援教育と混同されてしまいますが、障害があるなしに関わらず、子どもたち一人ひとりが質の高い教育にアクセスをすることを目指す教育のことを指します。インクルーシブ教育では、ユニバーサルデザインの考え方が取り入れられていますが、これは誰もが利用しやすいことを想定されたデザインであることから、健常者とされる人たちにとってもより使いやすいデザインになるというメリットがあります。
同様に、インクルーシブ教育を行うことで、障がいがある子どもが授業についていけず、クラス全体の進捗を遅らせてしまうことではありません。また、必ずしもコストの増加につながるものではありません。そして、実は障がいがないとみなされている子どもにとってもメリットがあります。
まず、学びの方法は多様であることを理解する必要があります。文字を書いて学ぶことが得意な人がいれば、音読をしなければ頭に入らない人もいます。座って姿勢よく学ぶのが得意な人もいれば、立ち歩いた方が良いという人もいます。このように、学び方は本来多様であるはずですが、特定の方法しか認められない場合は、学びから排除されたと感じることもあるでしょう。私の友人は、自宅で横になって勉強するのが得意だと言っておりました。彼はベッドの中で鉛筆を使うと汚れてしまうので、暗算でミスをしないよう答えようとしていたそうです。結果として、暗算でセンター試験の数学で満点をとり、東京大学に合格しています。
インクルーシブ教育では、多様な学びを認めることは、特別扱いだとされてきたことを認めていくことになります。文字の読み書きが苦手な子もいます。そうした場合に、教室内でタブレットを利用することを認めるという事例もあります。新宿区では「まなびの教室」で、こうした機器を導入していますが、電子機器の適切な活用についても検討が必要です。
私は8月に株式会社LITALICOのインクルーシブ教育研修を受講してきました。株式会社LITALICOは、「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、就労支援や、子どもの学習支援など斬新な障がい者支援事業を展開し、今年上場を果たした会社です。ホームページにも「学校での合理的配慮ハンドブック」が公開されており、Webマガジンやメルマガなどインターネットを通じて様々な情報が無料で公開されていますので、インクルーシブ教育を導入する教育関係者からも注目されています。
研修では、現職の教員の方々と座学やワークショップを行いました。私が受講した際には、「1.ユニバーサルデザインの視点を取り入れた教育とは」「2.行動面に困難さのある子どもへの支援」「3.学習面に困難さのある子どもへの支援」「4.情緒面・心理面に困難さのある子どもへの支援」「5.インクルーシブ教育に向けたアクションプランを作ろう」、という5つのテーマについて学びました。本日はその1つ、「2の行動面に困難さのある子どもへの支援」についてのみお話します。
まわりの人に噛みついてしまい、対応に困っている子どもがいるという教員がいらっしゃったので、その方の事例を扱いました。行動分析学から発展したPBSという問題解決のプロセスに基づき分析していきます。PBSにより行動の理由を明らかにすることによって、困っている行動をおこさなくても済む、より良い行動を起こしやすい環境をつくることができます。
現場で起こる問題は深刻で、子どもの問題を教員が一人で抱え込んでしまうことで、精神的に追い詰められることも少なくありません。そこで学校や教育委員会と共有することも重要だと考えます。誰もが問題解決で一定の成果を出すため、フレームワークを用いることは有効な手段だと考えています。

そこで2点質問がございます。

1.現在の新宿区立の学校では、インクルーシブ教育が定着してきているとお考えでしょうか。インクルーシブ教育に関する指針の策定や、例えばPBSなどについて書かれたマニュアルが必要だと考えます。また、研修を通じて行動支援計画を作成するなど現場でそのまま活用できる内容の演習も必要だと考えていますがいかがでしょうか。
2.新宿区の既存の取り組みに関してです。現場においても、ユニバーサルデザインに関する研修、まなびの教室へのiPadの導入、巡回相談、刺激量の調整など、すでにインクルーシブ教育に関連する取り組みが行なわれている点は評価できます。これらの取り組みを、今後はどのように発展させていき、各学校への支援を行っていこうとお考えでしょうか。

教育委員会のお考えをお聞かせください。

教育長 インクルーシブ教育に就てのお尋ねです。
現在、区立学校ではインクルーシブ教育の推進のためユニバーサルデザインの視点を取り入れた教室環境の整備や授業づくり、学級経営を進めています。
また、発達障害等で学習に困難のある児童・生徒に対しては特別支援教育推進員による支援や、まなびん教室では先行的にタブレット端末を導入し子どもの特性に合った指導を行っています。
これらの取り組みは、教職員はもとより児童・生徒や保護者の間でも理解が進んでおり、インクルーシブ教育は着実に定着しつつあると考えていますが、一方で特別支援教育推進員の一層の質の向上や、タブレット端末等の活用をさらに進めること、様々な特性のある子どもたちがともに学ぶ意義について保護者のより一層の理解推進などの課題があると認識しています。
インクルーシブ教育に関する指針等としては、まずユニバーサルデザインの視点に立った教育の推進のため、平成26年・27年の教育課題研究校における研究の成果を踏まえてパンフレットを作成し、区内全校で実施できるよう配布しました。
また、発達障害の児童・生徒の指導に関しては、まなびの教室ガイドラインや、特別支援教育推進員の派遣基準等を定め、整備を進めています。
さらに、全教員が特別支援教育についての理解を深めることを目的に作成した研修セットの活用や、まなびの教室における個別指導計画書の作成等を通じて、インクルーシブ教育の推進を図っています。
次に、インクルーシブ教育の今後の展開についてですが、まず特別支援教育の一層の充実や、タブレット端末をはじめとするICT機器の活用促進等の課題に、着実に取り組んでいきたいと考えています。
また、研修により教員の理解を深め、専門性を高めていくとともに、専門家による巡回相談等により各校の取り組みを支援し、インクルーシブ教育のさらなる推進を図っていきます。

昨年からこのテーマについて注目してきましたが、着実に前進をしています。
また、答弁調整の過程では、PBSについても共有する機会もいただくことができました。

私の任期中にインクルーシブ教育が一歩でも前に進むよう、引き続き取り組んでまいります。

質問でも触れましたが、インクルーシブ教育について改めてご説明させていただきます。

インクルーシブ教育とは、子どもたち一人ひとりが質の高い教育にアクセスをすることを目指す教育のことです。
一方で、特別支援教育とは障がい者、病弱者に対しておこなわれる教育です。

以下の図をご覧ください。

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左側のインテグレーションでは、障がいがある子どもが同じ教室で勉強しているイメージです。
インクルーシブ教育の議論をしている場合にも、多くの場合は特別支援教育を同じ場所で行うインテグレーションを想定した話だったりします。

一方のインクルーシブは、障がいがあって特別な支援が必要だとされる子どもだけでなく、すべての子どもが質の高い教育にアクセスできるということが前提になります。

もちろん共通する部分もあるとは思いますが、障がいがないとされている子どもでも排除されることがあってはいけないので、この前提は忘れてはいけません。

先ほどの図はLITALICOさんのインクルーシブ教育研修で学んだ内容を参考にしています。
ご興味のある方は、ぜひこちらの研修も受講してみてください。
2016年度 インクルーシブ教育中級者養成研修

それでは本日はこの辺で。

ABOUTこの記事をかいた人

伊藤 陽平

新宿区議会議員(無所属) / 1987年生まれ / 早稲田大学招聘研究員 / グリーンバード新宿チームリーダー / Code for Shinjuku代表 / JPYC株式会社