こんばんは。新宿区議会議員の伊藤陽平です。
本日は、「介護保険改正の詳細と対策」という勉強会に出席させていただきました。
講師は業界では有名な小濱道博さんです。
国も予算を増額して対応を続けてきましたが、少子高齢化により厳しい財政状況が続いています。
そのため介護報酬の3年に1回の改定は、事業者にとっては厳しい内容となります。
ちょうど国会でも2018年の介護保険改正に関して審議されていますが、衆議院で可決、参議院でも可決される見通しです。
どのような変化があるのか、いくつかポイントをピックアップしてご紹介させていただきます。
まず、報道等でも話題の3割負担についてです。
介護保険制度では、年収によって負担割合は変化します。
年収280万円で1割負担、年収340万円で2割負担、年収340万円以上は3割負担となります。
また、高額介護サービスを利用する際、家計が過度な負担をしないように自己負担の上限が決められています。
高額介護サービスを利用した際の自己負担の上限額は、現役並み所得世帯、一般世帯の場合、44,000円から57,600円へと引き上げが行われます。
3割負担の利用者は全体の約3%です。
もちろん暮らしに影響が出る問題ではありますが、経済的にも余裕のある可能性が高い方だと想定されるため、利用控が起こる可能性は現時点でそれほど高くないと言えます。
ただし注意が必要なのは、年収基準は省令により決定されるため、介護保険法の改正が必要ないということです。
国会の審議なく年収基準や高額介護サービス費を引き下げることも可能で、5年先、10年先には大きな影響が出る可能性があります。
また、今後はコンプライアンスや職員のモラルが重視されるようになります。
有料老人ホームは都道府県知事への報告が必要となりますが、無届け物件の行政処分は厳しくなります。
例えば、有料老人ホームの1階に訪問介護やデイサービスが併設される場合がありますが、老人ホームが業務停止命令になると、併設された訪問介護やデイサービスも指定取り消しになる可能性があります。
最後に、特に影響が大きいと言われるのが、財政インセンティブです。
まず、市区町村は介護度の引き下げ、給付総額の達成目標を策定し、達成した場合は交付金を得られるという仕組みがあります。
インセンティブのために、認定基準を厳しくしたり、実地指導の強化、あるいはケアプラン点検の強化などが行われる可能性もあります。
さらに、都道府県が市区町村の計画を厚生労働省に報告する役割を担うことになっているため、都道府県にも交付金を獲得できるインセンティブがあります。
中には交付金のインセンティブを放棄しようと考える自治体もあるかもしれませんが、最終的には都道府県が市区町村へ厳しい対応を取ることになるでしょう。
また、成果が達成できない場合、交付金だけではなく調整交付金がカットされることにもなります。
一方で、介護予防に力をいれて市民の負担が減らすことができた和光市のような先進的な事例があります。
自分でできることはやっていただくことが原則で、従来であれば支援の対象であった支援が対象から外れ、機能訓練中心となりました。
簡単なようですが、市民のご自宅へ訪問してご納得いただくと言う過程も必要で、和光市では10年以上かかって定着しています。
大変素晴らしい取り組みですが、本気でやることは大変です。
和光市方式が成功事例として注目されてきましたが、広まっていないことからも、簡単ではないことは明らかです。
これを国が推進しようと考えているため、各自治体は大きな改革を迫られることになるでしょう。
何よりも利用者にとって良い事業が行えるよう、取り組んでいかなければなりません。
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本日のイベントは、株式会社アスモさんが主催されておりました。
株式会社アスモの花堂社長は私が尊敬する経営者でもあります。
イベントの趣旨として、
「事業者にとって厳しい話もあるが、まずは現実を知ることが大切。改正を前向きに受け止めて、会社としても変わっていこう。」
と、これまで努力を重ね、現在に至っているとご説明がありました。
最後に、花堂社長からは、ヘルパー旅行に関するお話もありました。
ヘルパーさんの報酬も必要になるし、高額なサービスを高齢者が使うことが良いのか考えたそうです。
しかし、サービスを受けた高齢者の方は涙を流して喜ばれていたそうです。
このような、ありがとうが連鎖する介護事業者の実態や現場の声をしっかりと認識した上で、区政に活かして参りたいと思います。
それでは本日はこの辺で。