地方創生で補助金の達人(増田氏と元副区長)に優秀な公務員は飼い殺される

こんばんは。新宿区議会議員の伊藤陽平です。

昨日に引き続き、南伊豆町の視察レポートです。

衝撃の特養・日本版CCRC事業の実態はこちら↓
特養・日本版CCRCで都市部杉並区から南伊豆町を地方創成。現場で見えた課題

南伊豆町役場では、特養に限らず広く地方創生関連のレクチャーをしていただきました。

こちらの生涯活躍に関する取り組みを行われていることが特徴です。
南伊豆町生涯活躍のまち基本計画.pdf(1.17MBytes)

この企画自体は特養以外に関しても記述されていますが、杉並区に関わらず都市部との連携を意識した計画となっています。

昨日もお伝えさせていただきましたが、杉並区の健康学園跡地の活用を巡って特養を建設するはずでしたが、話が変わり、結局跡地の活用はせず別の町有地を利用することになりました。
では実際の健康学園跡地には何をつくるかですが、周辺を巻き込み「ミナミイズ温泉大学」というプロジェクトが行われるようです。

伊豆新聞もご参考に↓
元総務大臣・増田氏 南伊豆町の事業視察

共立湊病院跡地や蝶ケ野の森守でも説明を受け、町役場で町議や産業団体関係者らと意見交換をした。増田氏は「ミナミイズ温泉大学(仮称)は既存資産の再生がありすごく威力的。CCRCの先をいく」と述べ「地方は東京より家賃や食費が浮き生活の時間もつくれる。若者もフィットする。都会で疲れた人がリフレッシュし健康になる、高齢者も健康寿命が伸び社会貢献できる、そんなCCRCをつくろう」と呼び掛けた。

弓ヶ浜クラブという杉並区の保養所があるエリアです。
健康に関する講座を開設したり、サテライトオフィスやアトリエをつくったり、様々な事業が行われるとのことでした。
そして、総務省により本事業をモデル事業と位置付けられ、今後は他自治体にも展開される見通しです。

増田氏がおっしゃるように「若者もフィットする」とは思えません。
決定的な理由は、新たな仕事を生み出すことが困難だからです。

2012年〜2014年の創業比率は、全国平均が6.33%、静岡県5.70%に対して南伊豆町は2.34%と非常に厳しい状況です。

なぜこのような状況になるのでしょうか。
主な仕事は、観光地ということでホテルなどが考えられますが、初期投資も多くバブル崩壊後の昨今は参入は難しいと言えます。
その他は漁業や農業と言われていますが、特に漁業の場合は漁業権により新規参入が非常に厳しい状況です。
余暇に遊びにくる分には素敵なところだと思いますが、東京でさえ苦労するにもかかわらず、サテライトオフィスをつくるだけで新たな仕事が生まれるほど簡単ではなく、「若者もフィットする」と言えるのでしょうか。

地方創生室でレクチャーをしていただきましたが、同じ部屋で杉並区から派遣された職員の方もお仕事をされていました。

担当の方からレクチャーを受けている最中も、
「この補助金が…。」
と職員の方がお仕事をされている様子でした。
地方創生事業を行う上で補助金は不可欠です。

また別の方からは、
「政策アドバイザーが…。」
という単語も聞こえてきました。

元杉並副区長が政策アドバイザーとして就任されているため、おそらく彼のことを指していると考えられます。
この政策アドバイザーは特養案件のために就任されたわけでなく、広く南伊豆町のためにお仕事をされているそうです。

増田寛也氏、そして政策アドバイザーの元副区長どちらも南伊豆町に関わる再就職先が決まっています。
民間企業でもありませんし、天下りとまでは言いませんが、本当にこの人選が良いのか疑問です。

このお二人は、補助金獲得の達人と言って間違いないでしょう。
特に増田寛也氏に関しては、これまで地方創生の名のもとにあらゆる提言を行い、多くの補助金を生み出してきた中心的人物でもあり、日本中のどこを探しても右に出る人物はいません。

地方創生を行うためには、補助金ゲッターに税金を支払うのではなく、民間企業のリソースを活用し、新たなビジネスを創出するべきではないでしょうか。

一方で、私たちにレクチャーをしてくださった南伊豆町役場で地方創生担当されている方と、短い間ですがお話をさせていただき、非常に素晴らしい方だと感じました。
実力のある方は地方にもたくさんいらっしゃると思いますが、未来に向けて本当に必要なものというよりも、補助金ありきで計画が組み立てられているのが現実です。

地方在住の優秀な人材の多くは、役所にも集まっています。
ご承知の通り、地方で採算が取れないため交付税に依存していますが、中には住民税と公務員給与の額がほぼイコールという自治体もあります。
本来は、優秀な人材が民間に就職したり起業することで街を盛り上げていくものですが、補助金の獲得を仕方なくやらされている状況では、活性化しないのは当然のことです。

そして地方の優秀な人材がいなくなる理由としては、都市部の仕事に魅力があるため人口移動が起こるということが挙げられます。
さらに、補助金により行動が歪められ、本来は優秀である人材を飼い殺しにしているため、機能しなくなるということにも、大きな問題があります。

南伊豆町は本当に素敵な街で、また足を運びたくなります。
一度補助金の依存から脱して、新規雇用の創出に注力すべきです。
補助金による支援ではなく、都市部の民間企業との提携を行うことで健全化できます。

今回の滞在では、無難に認知度の高いホテルに宿泊しましたが、
「美味しいものが食べたいなら、圧倒的に民宿がオススメです!」
と職員の方が優しく教えてくださいました。

今後も地方創生に関するモデル事業が着実に進められることになりますが、改めて観光兼視察をさせていただければと思います。

総務省により、今回の先進的なモデル事業に基づき、さらに展開されていくことになる見通しです。
つまり、都市部と連携した地方創生のあり方を論じるには、今しかチャンスはないと言っても過言ではありません。
都市部との連携が不可欠なモデルが打ち出され、新宿区や都内自治体が無関係ではいられない状況になるでしょう。
国が決めた補助金によるインセンティブで動くのではなく、各自治体が主役となり本当に必要なことに取り組むべきです。

増田寛也氏も関与する特養・日本版CCRCの事例がまかり通らないよう、杉並区民のみなさまにはご尽力いただければ幸いです。

それでは本日はこの辺で。

ABOUTこの記事をかいた人

伊藤 陽平

新宿区議会議員(無所属) / 1987年生まれ / 早稲田大学招聘研究員 / グリーンバード新宿チームリーダー / Code for Shinjuku代表 / JPYC株式会社