いのつめまさみさんに子ども食堂のリアルを聞いてみた

子どもの貧困問題は、新宿区議会でもたびたび議論になりました。

本日のテーマは、区議会の議論でも頻繁に登場している子ども食堂についてです。

ひとり親、あるいは共働きで買ったお弁当を食べている子どもがいたり、場合によっては給食以外はまともな食事が取れていないこともあります。

そこで、ボランティアを中心となり、無料、安価で栄養バランスのとれた食事が提供されているのがこの子ども食堂です。

新宿区内にもいくつか子ども食堂がありますが、ニコニコ子ども食堂を運営する、NPO法人キッズ未来プロジェクトのいのつめまさみさん(前東京都議会議員)にお話を伺いってきました。

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新宿区ニコニコ子ども食堂 – shinjuku2525 ページ!

—キッズ未来プロジェクトを始めたきっかけは何でしょうか?

いのつめ氏:以前から子どもの貧困や虐待にはとても胸を痛めていました。どこかでこれを食い止めなければいけないっていう思いがだんだん強くなってきたんですね。
今ちょうど議席を持っていないところで、今なら時間があるしできるのではないか、とおもいました。私には人脈という財産がありました。色々な職業の方を知っていたということで、校長先生をお辞めになった方、保健師さん、歯科衛生士さん、栄養士さん、調理師さん、それから先生を退職された方が周りにいらっしゃって、お声をかけたらすぐ賛同してくださいました。
準備を始めて1か月くらいで、理事が14人集まりました。

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—それだけ共感があったということですね。

いのつめ氏:そうですね。皆さんもすごく心配をされていたテーマだったんだと思います。スムーズに設立に至りました。
3月30日に特定非営利活動法人キッズ未来プロジェクトを東京都に申請しました。7月1日に認証されました。認証されてそれで終わりではなく、登記が必要になります。今、登記をしているところで、間もなく登記も終わります。

—もともといのつめさんがこうした問題に関心を持たれていたからこそ、人が集まってきたんですね。

いのつめ氏:やっぱり、子ども3人この新宿区で育ててきて、みんな公立で中学校まで終えました。その中でPTA会長をやっていたり、保護司をやっていたり、育成会の役員をやらせていただいたりと、子ども達の健全育成と少年を犯罪から守る事にはすごく思いが強かった。

—そういうバックグラウンドがあったんですね。

いのつめ氏:学校給食が一日の唯一の食事いうお子さんが新宿にもいます。東京都では10.3%が貧困率で、全国的に見るとやや低いものの、それでも10人に1人はいます。新宿区内の小学校の校長先生で、インフルエンザが蔓延しても学級閉鎖にしたら貴重な一食である給食が食べれなくなってしまうということで、なるべく学級閉鎖にしない道を選んでくださったという方もいると伺いました。やはり、食事を必要としているお子さんもいるだろうと思いました。
長女が昨年出産し育児休暇中でした。出産の後、自分と言葉の通じない子どもだけで、子育ては孤独になっちゃう。もし食堂を作ったら、昼間の時間は小学生が帰ってこないうちは、妊娠してる人とか女性とか、子育て中、育休中のママとかが集まれるような居場所になるといいな、という意見も出てきました。

—子ども以外の居場所づくりという意味も含めてやっていくということですね。

いのつめ氏:妊娠した女性が、例えば悲しいことですが望まない妊娠であったとしても、お腹のお子さんが愛おしいと思ってもらえるように、変えていかなきゃいけないじゃないですか。
そのためには自分一人ぼっちじゃないと、周りの人がみんな応援してくれる、お腹の子を大事に育てよう、命を守ろうって思って、本来持っている女性の母性を大事にしていけたらなということも考えました。

—今の時代に必要な考え方ですね。

いのつめ氏:ゆくゆくは年代で輪切りにしないで、本当は小さいお子さんからご高齢者までが一度に集えるような居場所がいいなと思っています。
家賃が高い新宿区では、なかなか拠点で開催するということが難しいんですよ。

—施設の問題もありますしね。

いのつめ氏:今は地域センターの調理室を借りての開店になっていますが、予約が取りにくい、定員数がある、時間が限られる等問題もあります。拠点での開店も視野に入れて活動していきたいと思っています。

—スタッフ、運営の資金や食材などはどうしているのでしょうか。

いのつめ氏:ボランティアさんは、ホームページで募集しているので、心を痛めてる方たちが何か自分も協力できるなら、男性も女性も調理なら自分はお手伝いできる方が多くいらっしゃって、毎月ボランティアさんが10名ずつ増えています。嬉しい事です。
それと同時に、資金は知り合いにこういう事をやっているっていうお話をすると、ご寄付をくださる方もいらっしゃったり、食材の提供も受けますと言っていると、お米とか送ってくださいます。
あと野菜は栄養士さんが練馬の畑をお持ちの方のところに朝採りに行って、朝採れたて野菜を夕方お子さんに食べていただいています。それも、提供していただいています。
お魚の提供はなかなか難しいですが、歌舞伎町に舟藤さんという小さな築地があるんですよ。そこに予約をして、お魚を買わせていただいています。

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—ボランティアはどんな方がいらっしゃっていますか。

いのつめ氏:やや女性が多いですが、高校生の方から70代まで幅広い年代です。

—本当ですか!どういうところでこの活動を知るんでしょうか。

いのつめ氏:ホームページでしょうね。新宿区外からも参加者がいます。

—ボランティアできる場があればやりたい、という方はいるんでしょうね。子どもたちにはどのような支援が必要だとお考えでしょうか。

いのつめ氏:朝ごはん食べないで学校に行くお子さんがいて心配ですけど、それって親御さんも忙しくて朝夜働いていてなかなかご飯食べさせられないというのがあって、子どもも親に悪いから食べてないって言わないで学校来たりするじゃないですか。
どこかに拠点があれば、朝そこに子どもが寄って、おにぎりとお味噌汁、パンと牛乳でもいいんですけど、昔だったら親が食べさせるのが当たり前だった朝ごはんですけど、もし親が大変だったら社会が食べさせてあげればいいじゃない、と。
特に長期休みのランチは共働きの家庭も多いし、シングルの家庭も多くて、夏休み一人でお留守番、兄弟だけでお留守番もありますよね。そうすると、何してるか心配じゃないですか。テレビばっかり見てるかとか、ゲームばっかやってるんじゃないか、漫画を読んでるんじゃないかとか、やっぱり親御さんって心配だと思うんで、何食べたかもとても心配だと思うんで、やっぱり長期休みのランチもこれから必要だと思っています。

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—なるほど。食堂についてのお話を伺ってきましたが、食堂以外の活動についても教えてください。

いのつめ氏:学校のあるときには、午後6時からニコニコ子ども食堂の場合は、ボランティアさんもみんな揃っていただくんです。だから30人くらいが一同に食事をいただくんですけれども、その前に4時から開店しています。
宿題持ってきたり、宿題終わったらトランプして遊んだり、ご高齢者の方が得意分野を生かして英語を教えてくれたり、囲碁をしてくれたり、そういうことをして学習支援をしながら居場所づくりをしています。
で、食事が終わったら、歯科衛生士さんの歯磨き指導。子ども達は嫌がるんですけど、歯磨くの。歯科衛生士さんが「ちょっとここ磨いてごらん」ってやりながら、歯科衛生士さんは口の中を見ると、プロですから「◯◯ちゃんのお母さんいますか〜」って言って、「ちょっとこの歯が気になるので、近いうち歯医者さん行ってください」「こうしたらどうでしょうか」とかアドバイスをしてくださるんです。
虫歯が多い子は貧困の場合が多いと、統計的に出ています。それをほっとかないで、将来歯をなくすようなことにならないようにね、早いうちから子ども達の虫歯の治療、早期発見して治療をしてもらうといいなと考えて行動しています。

—運営していて大変だと思ったことはありますか?

いのつめ氏:おかげ様で社会福祉協議会から支援をしていただいてます。新宿区の子ども未来基金にも手を上げさせていただきました。ご寄付もあり、なんとか運営上はどうにかやっていけていて、しばらくは財政難にならず運営できると思います。一番運営する上で難しいのは、本当に必要としている子に情報が届いているかどうかです。それが心配です。

—学校を通じて届いているか、ということですね。

いのつめ氏:学校にはお願いをして、チラシを配っていただけてる学校もあります。
学校がせっかく配ってくれても、必要としているお子さんがチラシを親に見せて、「僕、い行きたい」ということにつながるかどうか。そこがやはり、どこの子ども食堂さんもそうだと思いますが、課題だと思っています。
民生児童委員さんとか、主任児童委員さんと言われる方は、そういう必要としているお子さんをご存知だとしても、守秘義務などがあり、それがうまく繋がらない。そこが連携とれて繋がっていくといいですね。
食堂の中ではどこのお子さんか誰もわからないようになっていて、愛称で呼んでいます。注意は払っていますから、あまり気にせずに参加していただけるといいなと考えています。

—団体としての今後のビジョンを教えてください。
いのつめ氏:東京では50か所くらい子ども食堂ができています。新宿区でもポツポツとでき始めています。もっと増えて欲しいと思っていて、子ども食堂をやるにはどうしたらいいかということを、私も先輩たちに教わりましたけど、その私たちが持ってるノウハウや情報を、これから立ち上げたいと思っている方たちに提供していきたいと考えています。
そして多くの仲間が増えたら、新宿区の中でネットワークを作っていきたい。ネットワーク化して、近隣食堂は開店の日にちを変える。周囲の食堂に行けば、行ける回数が増えます。
開店の日時の調整、食材の融通、またボランティアが足りない時に他の食堂からお手伝いに行くとか、そういう連携を取れるようにするためにもネットワーク化が必要だと考えています。皆さまご協力お願いします。

聞きたいことがたくさんあって、ついついロングインタビューになりましたが、子どもの問題を解決していきたいという熱い思いをお聞かせいただきました。
いのつめさんの子どもたちを愛するエネルギーから、多くの賛同者が集まっています。

今月の後半には高校生インターンがやってくる予定になっておりますが、実際に子ども食堂へお伺いし、改めてブログでもご報告させていただきたいと思います。

それでは本日はこの辺で

ABOUTこの記事をかいた人

伊藤 陽平

新宿区議会議員(無所属) / 1987年生まれ / 早稲田大学招聘研究員 / グリーンバード新宿チームリーダー / Code for Shinjuku代表 / JPYC株式会社