保育業務支援システムの導入に反対した理由

本日文教子ども家庭委員会に出席しましたが、反対した補正予算案(補正第4号)についてのご説明です。

主な理由として4120万円の保育所業務効率化推進事業のうち、4000万円い相当する保育業務支援システムの導入というものがあげられます。

要するにICTを活用して業務を効率化させよる事で保育士の負担を減らす事業ですね。

これは厚生労働省が主導する事業で、1園あたり100万円、そのうち3/4は国庫補助が出ます。
園ごとに支援を行うことになっていて、対象は合計で40園あるので4000万円の予算が計上されていました。

補助の条件としては、
ア園児台帳の作成・管理機能
イ指導計画の作成機能
ウ保育日誌の作成機能
がすべて搭載されていることがあげられています。

ICTを活用することで保育士の負担軽減を目指すこと自体は賛成です。
園側に補助をすることで市場原理が働き民間事業者のノウハウを活用することに関しても理解できるところです。

しかし、いくつか問題点がある中で、4000万円の投資をすること自体には賛同できません。

最初に、先ほどの3つの機能であればシステムを導入するまでもない場合もあるでしょう。
本日の委員会でもお話させていただきましたが、WordやExcelを効率よく活用するだけでも効率化できるような話(少なくとも上記のア・イ・ウ)はたくさんあります。

また、投資の選択肢が1園ごとに100万円となっていることも、選択の幅を狭めています。
そもそも、100万円の予算でシステムの開発は不可能ではありませんが、結構厳しいものがあります。
必然的に既存のパッケージを導入することが想定されます。

補助金に対応したパッケージがたくさん販売されていましたが、パッケージの導入をする場合、園ごとの特性までは考慮されません。

ICTには開発したあとの横展開のコストが低いという特性があります。
区がとりまとめて、100万円×複数園でシステム開発費を捻出することで、機能がより充実し4000万円以下までコストダウンする可能性も検討できたはずです。
そして、区側にもノウハウが蓄積されるため業務効率化支援を行う上でも役に立つでしょう。

しかし、今回の制度では複数園にまたがってシステムを開発することはできないものでした。
今回は政府が使えるかどうかわからないシステムを開発するのではなく、あくまで園側へ補助を出すことで市場原理を働かせたということは評価できるものです。
しかし、質の向上と費用対効果を出す選択肢が選べるよう、国の事業をそのまま解釈するのではなくさらに自由な発想で取り組む必要があったのではないかと思います。

そして、根本的なICTスキルがなければ、システムを導入しても効果がいまひとつになります。
私も調べてみましたが、想定されるパッケージは複数種類ありますが、その選択一つや人的リソースの投じ方なども園ごとのリテラシーによります。

例えば100万円するギターがあっても、実力がなければ良い音は出ません。
システムを導入してもパフォーマンスを十分な発揮できない場合もあるでしょう。

またシステムには誰が利用しても一定の効果を出せるという特徴はありますが、あくまでシステムの枠の一部の話であって、すべての事務に対応できることはありません。
プログラムで対応できないことがあっても、Officeなど既存のツールで最大限効率化するスキルがなければ、生産性が低い状況から脱出することはできません。

例えば、PCの基礎スキルを高めることを支援することは今後も必要になるでしょう。
園自体でも研修などの努力をされていると思いますが、スキルのある方がいらっしゃれば園のニーズに合わせフォームを作成し効率化することができるからです。
何が優先順位として高いのかなど、とにかく負担軽減の方法を考えていくべきです。

反対討論をさせていただいた上で、国の事業をそのまま園に流すだけでなく、スキルの差があることで非効率な投資にならないようパッケージの選定や導入後の支援を要望させていただきました。

担当課の方もコンピュータに詳しい方なので、今後保育士の業務が効率化されることに期待しております。

残念ながら、今回のように議案に反対したところで37対1で結果が見えています。

公費支出が増大し続けることに対する問題提起と解決策を示し、世論を盛り上げて議会にも影響力を持たなければいけません。
もっと新宿区内での政治的な戦闘力を高め、改革を実行します。

それでは本日はこの辺で。

ABOUTこの記事をかいた人

伊藤 陽平

新宿区議会議員(無所属) / 1987年生まれ / 早稲田大学招聘研究員 / グリーンバード新宿チームリーダー / Code for Shinjuku代表 / JPYC株式会社