散々議論して廃止される学校選択制度は、区民の意思で形を変えて維持される見通し?

こんばんは。新宿区議会議員の伊藤陽平です。

昨日に引き続き、文教子ども家庭委員会のご報告です。
学校選択制についてパブリック・コメントの結果が出たので、改めて議題となりました。

まず、学校選択制と言っても、私が政策として実現したいと考えるバウチャーを前提としたものではなく、希望する指定校以外の学校へ通学できるというものです。
いただいたご意見の内容ですが、パブリック・コメントを利用される方である以上、提示された案に賛成というよりも、ネガティブな意見が多い傾向にありました。

昨今では、様々な家庭の事情もあり、指定校以外の学校を選択したい個別のニーズがあります。
新宿区教育委員会が学校選択制を認めてきた以上は、個別のニーズに対して特定の価値観で一概に否定できるものではありませんし、仮に区民の選択肢を狭めることがあれば、財政負担などの観点から議論を行うことも必要でしょう。

学校選択制度を廃止することで、地域の結びつきが突然強力になるかのような説明がされることもありますが、必ずしもそうではないとお考えの方もいらっしゃるようでした。
学区域や町会という単位だけではなく、地域としてより広域に対応していくべきだというご意見もありますし、隣接校の方が距離も近く安全に通えるような場合もありますし、自由度が認められない場合には学区域についての議論も必要です。

また、私も議会で取り上げたアンケート結果の解釈ですが、新宿区学校選択制度検討協議会報告書では7割の方が廃止を望んでいるととれる内容がありました。
しかし、パブリックコメントには「実際にはそれほど多くはないのでは」というご意見もありました。
過去の経緯を遡ると、報告書では「制度の見直し(廃止)が7割であった」となっていましたが、パブリックコメントによる回答では、「現行の『選択制度は維持』以外を支持した方が7割」と、報告書の内容に対する修正がされていました。

学校選択制度は、あくまで各家庭がオプションとして選択できるものです。
他人の家庭の事情まで踏み込んで考えを変えさせようとする人はそれほど多くないというのが私の実感でしたが、アンケート結果にもそれは反映されています。

過去の代表質問もご参考に↓
小学校選択制度廃止で問題なし。教育委員会の対応は結論ありきでは

学校選択制度について改めて確認すると、答申のもとになる「新宿区学校選択制度検討協議会報告書」には、「『小1保護者』と『小学校PTA』は選択肢1の『選択制度は維持』が3割強。選択肢2の『選択制度と指定校変更との一本化』も同じく3割強であり、選択肢3の『指定校変更の周知徹底』の2割、選択肢4の『選択制度は必要なし』の1割とあわせると、制度の見直し(廃止)が7割であった。」との記述がありました。

しかし、PTAとしてアンケートに回答された方からご意見を伺ったところ、設問がYES、NOで回答できるものではなく曖昧で、選択肢2と3に関しては「廃止」の意思表示ではないとのご意見をいただきました。
本当に廃止を望む場合は、4の『選択制度は必要なし』と回答したものをとらえるべきで、廃止と言い切れるものは、2と3も合わせての「7割」ではなく、4の『選択制度は必要なし』と回答した、小1保護者で11.23%143件、小学校PTAは8%4件と表現することが適切かと思います。

次に、中学校のアンケート結果に関して該当箇所を抜粋すると、「『各保護者(中1・中3・小6)』とも5割近く(45%~48%)が『選択制度は維持』 と回答。『中学校PTA』も同じく5割近く(47%)が『選択制度は維持』と回答。中学3年生については7割近く(68%)が『選択制度は維持』と回答。」と記載されています。
なお、その中で中学校PTAについてのアンケートの結果を取り出して紹介すると、「1 選択制度は維持 【47.37%】 《9件》2 選択制度と指定校変更の一本化 【10.53%】 《2件》3 指定校変更の周知徹底【26.32%】 《5件》4 選択制度は必要なし【15.79%】 《3件》」です。

先ほどの「小1保護者」と「小学校PTA」の「選択制度は維持」では、それぞれ34.64%と36%を「3割強」と表記していましたが、中学校の「各保護者」と中学生PTAになると45%~48%は4割強ではなく5割近くと表記されており、表現の方法によって受ける印象が変わります。
そして、それぞれのPTA同士の選択制度は必要なしを選んだ方を比較すると、幼稚園PTAの18・42%、小学校PTAの8%、中学校PTAの15.79%と結果は相当ばらつきがあります。

これでは、「アンケート結果とは関係なく、結論ありきで議論が行われていたのでは?」と、アンケートに回答された方が感じてしまってしまうのではないでしょうか。

設問設計に問題があったように思えますが、代表質問の答弁やぱパブリック・コメントに対する教育委員会の見解では、新宿区学校選択制度検討協議会でよく議論した上でのアンケートだったとご説明をいただいております。
これはすべての協議会に言えることですが、運営する教育委員会や区役所自体は必ずしも中立な思想ではありません。
特定の思想に偏ってしまえば、必要であるはずの反対の立場に対する検証がおろそかになり、区民の意思が反映されることはありません。
最終的な意思決定にはアンケート(投票)の結果を尊重すること、あるいは協議会に権限を持たせる場合は、維持、廃止のアンケート結果に対応した委員構成に再編してから議論を行うことで、より区民の実態に近い結論が導き出せるものと考えています。

さて、大切なのは学校選択制度の今後についてです。

教育委員会も建前として、これまでの議論をなかったことにするのは難しいとは思いますが、学校選択制度の廃止を望んでいた方が実態として多数ではない可能性や、あらゆるニーズを想定した柔軟な対応の必要性は、代表質問やパブリックコメントの意見を踏まえて、一定のご理解をいただけたものと考えています。

そして、学校選択制度を希望する区民も一定数いらっしゃるとため、廃止をごり押しすることは難しいです。

実際に学校選択制度の廃止に賛成している会派からも、
「学校選択制度が廃止されることについて問い合わせがきている。事情に合わせて指定校以外を希望される方に対しても真摯に対応すべき。」
という趣旨の要望をされていました。

私が単独で訴えるだけではなく、区民からの要望が大会派に届くことで、より柔軟に対応が行われるようになるでしょう。
最終的には、特定の事情において認められる指定校変更制度が柔軟に対応することで、学校選択制度に近づくことになります。

学校選択制度について議論を行い、様々な考えがあることが明白になったことで、一定の意義がありました。
賛成や反対を超え、区民の意見が広く反映され、民主的に妥当な制度に落ち着くことになるとは思いますが、散々議論して学校選択制度を廃止する意義は一体何だったのでしょうか。

学校選択制度の廃止という結論は、あくまで地域協働学校を推進する建前だったかのように感じてしまいます。
地域協働学校については取り組むべきだと思いますし、そのための政治的テクニックとして学校選択制度の廃止は仕方のない部分があったと推測できます。

しかし、アンケート結果の解釈や、議論の進め方など結論の導き出し方には大きな問題があったと言えるでしょう。
今後も、制度の見直しを行う際には、より議論を尽くせるよう見直しが必要です。

そういえば、担当課長も別の課から異動があり、新しい方になりました。
個人的にも信頼している方であり、前任の課長のご意思を受け継いだいただき、今後の改善に期待したいと思います。

それでは本日はこの辺で。

ABOUTこの記事をかいた人

伊藤 陽平

新宿区議会議員(無所属) / 1987年生まれ / 早稲田大学招聘研究員 / グリーンバード新宿チームリーダー / Code for Shinjuku代表 / JPYC株式会社