こんばんは。新宿区議会議員の伊藤陽平です。
本日は決算特別委員会で50分の時間をいただき、総括質疑をさせていただきました。
その多くは財政課に対する質疑となり、特に公会計について議論を行いました。
以前もブログでご紹介させていただきましたが、議会に入って財務諸表が一切ない状態で決算の議論をすることに衝撃を受けました。
決算書というほぼローデータの羅列のような資料を用いて議論をします。
こんな資料です。
行政に関するすべての事業を対象としていることから、
「〜をぜひ推進してほしい。」
「〜の件はどうなっていますか。」
など、質疑の内容は財政や自治体経営とは関係のないものが多く、通常の議会とほとんど差がない要望合戦になってしまっているのが決算委員会の実態と言えます。
なぜ決算特別委員会で財政や自治体経営の話が少ないかと言えば、情報公開のあり方にも原因があり議論が困難だからです。
経営判断ができるような資料を用いて議論が行われなければなりません。
そして、自治体側も公会計が活用できていないのが実態です。
自治体を対象とした公会計に関するとあるアンケート調査が行われていましたが、656の自治体が回答し、全体の75.3%は公会計の分析や活用をしていないという結果も出ています。
税金で予算が事前に決まってしまうため、決算は民間と比べて軽視される傾向にあります。
しかし、これからは決算を通じて、自治体経営を改革していくことが求められています。
これまで新宿区でも財務諸表が公開されていましたが、財政白書という冊子の中に掲載されるだけでした。
そして、財政白書は例年10月に発行されるため、決算特別委員会に間に合いません。
前向きなご答弁をいただいたこともありまして、今後は情報公開のあり方として、財務諸表や固定資産台帳をExcel形式で公開していただくことが決まりました。
また、地方公会計標準ソフトウェアの利用状況や、仕訳も含めた事務のフローについてお伺いしました。
単式簿記でこれまで帳簿をつけてきた経緯もあり、期末に複式簿記へ変換する期末一括仕訳方式が採用されています。
外郭団体も含めた連結財務諸表を作成していますが、資料が出てくるタイミングが遅く、会計のルールが統一されていないことに問題があり、財務諸表が作成されるタイミングが遅くなってしまうようです。
さらに効率的な仕訳が行えるよう、一例として和光市の事例もご紹介させていただきました。
参考資料はこちら。
資料:和光市の公会計制度について ~新公会計対応の新機軸「予算仕訳」と 地方公会計標準ソフトウェアを活用した「固定資産台帳の正本化」~ – Heroes of Local Government
既存の仕組みを変えることでコストが発生することになりますので、実現可能性も含めて財政課へ研究をお願いし、一定のご答弁をいただきました。
自治体が事業を行う理由は、市場で供給できないためです。
ただし、あまりにもコスト感覚がない事業が多いのが実態で、経済合理性の高い事業を行う努力が、すべての事業に必要です。
前例踏襲で予算を計上するのではなく、P/Lを用いて行政評価を実施し、民間経済の仕組みを積極的に取り入れることで意思決定を行うことが望ましいと考えています。
固定資産台帳を整備することで、老朽化の優先順位をより明確にすることも可能です。
公共施設等総合管理計画にも反映していただけるとご答弁をいただきました。
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会計が専門なわけではありませんが、ICTを活用して複式簿記で仕訳をして財務諸表を作成したり、効果的なIRを考えたり、民間の経験に基づき質疑を行うことができました。
その際に、IRコンサル会社で働いている民間の友人にも意見を出してもらいながら、最終的な質疑を決定しました。
議会側も個別の要望にとどまらず、積極的に経営者の視点で提言ができるよう、改革を行なっていかなければなりません。
経営的な視点を持つためには財政や公会計の視点は不可欠であり、引き続き提言を続けてまいります。
それでは本日はこの辺で。