リスクを取らない「新宿区子ども未来基金」は政策として適切ではない

本日は文教子ども家庭常任委員会の議案の審査が始まりました。
その中に、「新宿区子どもの未来基金条例」に関する議案がありました。

「新宿区子どもの未来基金条例」は子どもの貧困対策・教育支援などの事業を行う団体へ助成をするというもので、区として3,000万円を積んでいます。

ちょっと前に、同じような基金を見かけませんでしたか?

子供の貧困対策の基金、広報2億円→寄付1949万円 蓮舫氏「2億円を基金に入れれば」(ハフィントンポスト)

新宿区の状況をご説明しますと、これまで子育てアプリなど既存の広報戦略もうまくいってませんし、「夏目漱石記念施設整備基金」など他の基金でも苦戦をしています。

「夏目漱石記念施設整備基金」への寄付状況(新宿区)

寄付の受付開始 平成25年7月1日
寄付の目標額 2億円

寄付件数 1,450件
寄付金総額 73,014,385円

ターゲットを子どもにしたからといってお金が集まるとは考えられず、質疑をさせていただきました。

まず、NPOやボランティア団体にも相談するとのことでしたが、民間の資金調達のノウハウを行政でそのまま活用できると考えていません。

民間の資金調達に関しては、日本ファンドレイジング協会のような団体が登場し、非営利団体を対象にした資金調達のノウハウが広まっていることは良いことです。

日本ファンドレイジング協会

行政と民間非営利団体の大きな違いは、顔が見えるリーダーがリスクを取っているという点です。
社会的課題に命がけで取り組むリーダーが、子どもへの支援が必要か、問題意識やストーリーを語るからこそ、共感が集まり寄付へ繋がります。

行政の基金で心が動く要素がどこにあるのでしょうか。

この基金自体が不透明なもので、運用の際には行政コストも発生します。
一方、素晴らしい活動をされている非営利団体はたくさんあります。

クラウドファンディングや、インターネット寄付も発展してきているので、直接寄付をしたほうが早くて確実です。

非営利活動の社会的認知度が向上し、寄付文化が定着している中で、資金調達を目指すのはレッドオーシャンに飛び込むということ。
革新的なアイデアでもない限りは競争力はありません。
地域への営業コストを投下して、対応していくしかないでしょう。

新宿区子ども未来基金では、活動場所に関する支援などにも力を入れ、国にはできない地域の特性を活かす、ということも強調されていました。

本定例会でも、子どもの貧困問題への取り組みとして注目を集めるこども食堂の実施場所の問題について活発な質問が行われていましたし、ニーズに対応するのは良いことだと思います。

しかし、活動場所の支援が必要であれば、行政主導で新しく基金をつくることが事業として適切だとは思いません。

国の話に戻りますが、子ども未来応援基金に最初から2億円で基金を作るというアイデアも良い政策ではないと思います。

繰り返しになりますが、非営利活動への注目は高まっています。
新宿区内でも、こども食堂立ち上がっています。

あまり知られていませんが、各団体の努力により、税金で運営されている子ども食堂は一つもありません。

また、昨今では社会的課題を解決するために必要な資金を税から調達するのではなく、ファンドレイジングやビジネスの手法を活用する社会起業家の活動が注目をされています。

税金を投じて、新たな子どもの貧困対策事業を生み出すことになります。

これまで真面目に民間で活動していた団体は、税金が投じられた他の団体と市場で競争することを強いられます。

価格破壊が発生し、市場で税金が投じられた団体レベルの活動が求められてしまうことから活動することが困難になり競争力を失い、共倒れになるリスクが高いと考えています。

商店街活性化支援事業についても以前お話させていただきましたが、補助金に依存すると、税が打ち切られたら何もできなくなる、いわゆる補助金依存状態を生み出すことにもつながっていきます。

本日の委員会で新宿区子ども未来基金についての質疑をさせていただき、答弁を伺ったり、委員会終了後に調査をした結果、私は本議案に反対することに決めました。

理由はやはり、本当に子どもや団体のニーズを汲み取った上での事業だとは思えなかったからです。
国や他の自治体の真似をするのではなく、独自の支援にすべきでしょう。

もちろん、38名中私1人が反対しても、議案は通過します。

だからこそ、ただ単に反対するだけでなく、今よりも良い基金になることを願って討論します。

税に頼らず独立して素晴らしい活動をされている非営利活動のことを考え、適切な基金運用や広報を実施した上で、市場原理を歪ませないことに配慮をすべきだと明日の討論でもお話をさせていただければと思います。

やっぱり、寄付は直接が一番です。

それでは本日はこの辺で。

ABOUTこの記事をかいた人

伊藤 陽平

新宿区議会議員(無所属) / 1987年生まれ / 早稲田大学招聘研究員 / グリーンバード新宿チームリーダー / Code for Shinjuku代表 / JPYC株式会社