データシティ鯖江が超すごい!リアルタイムオープンデータとIoTで、バスの位置と混雑情報をスマホで確認

こんばんは。新宿区議会議員の伊藤陽平です。

これまでご紹介させていただいた、鯖江市レポートもついに最終章。
ラストは、昨年から新宿区でも取り組みの始まったオープンデータについてご紹介します。

これまでのレポートはこちら。

新宿区でも情報公開が推進され、行政資料のほとんどはホームページで閲覧することができるようになりました。
資料の多くは、人が読みやすいようPDFの形式で公開されているものです。
しかし、PDFはExcelのようなソフトでも扱いにくいように、システムに読み込むのが非常に難しい形式です。
そこで、人の目に最適化された形式ではなく、コンピュータが情報を読み込みやすい形式にすることが必要とされてきました。

オープンデータの世界では、最高レベルである五つ星とされるLinked RDFという形式が存在します。
鯖江市は積極的にLinked-RDFによるオープンデータを公開しています。
新宿区でもLinked-RDFという最もコンピュータに読みやすいとされる形式で、オープンデータの取り組みが始まりました。

完成度はさておき、私も実際にオープンデータを活用してコードを書いてみました。

Shinjuku Free WIFIマップ作成。オープンデータ入門は、SPARQLでLinked RDFを操作

オープンデータは、AIやIoTに比べるとまだ理解が進んでいないのが現状です。
「コンピュータが読み込めるデータを行政が公開したところで、一体何になるの?」
とお感じになられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

インターネットの生みの親としても有名なティム・バーナーズ=リー氏がオープンデータの可能性について語っているTEDのプレゼンは大変有名なので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。

福野さんは、ティム・バーナーズ=リー氏とお会いして感銘を受けたそうです。
そして鯖江市長にオープンデータを提案されて、実現にいたりました。
また、その後は鯖江市の事例を見た福井県がオープンデータに取り組み、県全体に広がったそうです。

オープンデータを進めるには、トライアンドエラーが必要です。
JK課の事例でもご紹介しましたが、公費に頼るのではなく理解ある大人たちによってなりたっており、アプリは福野さん自身が無償で開発されています。

鯖江市のみなさまのご尽力もあり、全国の自治体はゼロからオープンデータをスタートするのではなく、過去の事例を参考にした上でスタートできることになりました。
世界中のオープンデータが絡み合い、テクノロジーによって豊かな社会がやってくるまでには、もちろん膨大な時間が必要です。
しかし、今回の鯖江市で体感したリアルタイムオープンデータは、すぐにでもインパクトを与えることができると思っています。
例えば、オープンデータとIoTを活用したバスを快適に利用するための取り組みです。
バスの情報がリアルタイムにオープンデータとして公開されています。
地図を見ながらバスがどこを走っているかわかる「バスどこサービス」を利用すれば、待っている間も安心です。

つつじバス / 鯖江市|

また、福野さんが開発されたバス乗客数のグラフは、事業について検討する際にも役に立つことでしょう。

つつじバス乗客数グラフ

運転手さんの右側にはボタンが設置されており、まさにIoTによるリアルタイムオープンデータを実現しています。

そして、これらは1,500円コンピュータでおなじみのIchigoJamによってプログラムがつくられています。

こどもパソコン IchigoJam – はじめてのプログラミングパソコン(1500円)

IchigoJamは、以前もご紹介したsakura.ioでインターネットに接続します。

さくらインターネットが提供するIoTプラットフォームサービス、sakura.io

昨日アップしたようなオリジナルの基盤も利用されていますが、これらもインターネットで低コストで入手可能です。

IchigoJamが1,500円、sakura.ioの通信モジュールは8,000円で月額利用料が50円〜、基盤が5枚で500円。
驚くべき価格で、誰もがIoTに取り組めるようになりました。

バスの位置はGPSで自動的にデータが共有されますが、混雑状況は運転手さんが乗客をカウントしてボタンを押し、通信しています。
「椅子にセンサーでもつけて…」
と考えてしまうところではありますが、シンプルなシステムだからこそ、バス1台につき通信費込みで年間2万円と非常に低コストで利用できています。

また、今度は福井県としての取り組みをご紹介させていただきます。
福井県では水害が多いことから、水位をリアルタイムオープンデータで公開する取り組みが行われています。
そのデータを用いて、「ふくい防災シグナル」というWebアプリケーションが開発されました。

ふくい防災シグナル

開発を行ったのは、丹南CATVです。
企業のCSRのような取り組みにもなるようです。
街でアプリの看板も見かけました。

鯖江市でオープンデータの取り組みが進んだきっかけは、ベンチャー企業経営者でありエンジニアでもある福野さんや、新しい取り組みに挑戦される牧野市長のご尽力があってのことです。
牧野市長は、若い世代に勧められてブログをスタートされました。
現在75歳でいらっしゃいますが、今でもかなりの頻度で更新されています。
デジタルネイティブ世代の議員よりも柔軟な方だからこそ、新しい取り組みに挑戦できるのだと思います。

『さばえ.jp』百さんのブログです

オープンデータを担当する鯖江市職員の牧田さんとも、お話をさせていただきました。
コンピュータやIoTなど技術に精通されている方ですが、さらにオープンデータについても大変お詳しい方でした。
小学生にプログラミングを教えることもあるそうで、データシティ鯖江を支えるキーパーソンのお一人です。

鯖江市は、民間、市長、職員すべての能力と気持ちが一致しているからこそ、オープンデータが良い形で推進されているのだと理解しました。
膨大な関連資料をご用意いただき、たくさんの質問に丁寧にお答えいただいた鯖江市職員のみなさま、そしてご紹介いただいた福野さん、本当にありがとうございました。

これからICTが急速に発展し、オープンデータやIoT、AI等のインフラが整備され、今よりも社会が豊かになることでしょう。
しかし、ある日突然、SFのような世界がやってくることはありません。
鯖江市のようなパイオニアがトライアンドエラーを繰り返すことで、着実に未来へと進んでいきます。

新宿区内には、インフラを提供しIoT分野でも活躍されているさくらインターネットさんがありますし、AIで有名な企業があります。
国内外からの観光客が集まり多様性のある新宿区は、その気になれば先進的な取り組みは何でもできてしまうほど、恵まれた条件が揃っています。

区政での提言に加え、民間のアプローチとしてシビックテックに関する団体を立ち上げ、新宿区内での活動を広げていきます。
そして、これまで新宿区で取り組んできたことを形にしていきたいと思います。
ぜひご興味のある方は、ご一緒いただければと思います。

それでは本日はこの辺で。

ABOUTこの記事をかいた人

伊藤 陽平

新宿区議会議員(無所属) / 1987年生まれ / 早稲田大学招聘研究員 / グリーンバード新宿チームリーダー / Code for Shinjuku代表 / JPYC株式会社