新宿区はコンピュータの進化を軽視してはいけない。業務が自動化される時代、行政も一歩踏み出そう

こんばんは。新宿区議会議員の伊藤陽平です。

本定例会、代表質問のご報告をさせていただきます。
今回のテーマは、RPAと職員のスキルセットについてです。

質問原稿はこちら。

2018年第一回定例会代表質問

新宿区議会では、私以外の会派からも「AI」というテーマで質問が行われています。
そのこと自体は大変素晴らしいのですが、行政や議員の「AI」への理解は深まっていません。
特によくあるのは、
「仕事が奪われると、職員のスキルが蓄積されないおそれもあるし…。」
とネガティブな誤解をされてしまっていることです。

先日のブログで、つくば市のRPA(ロボットによる業務自動化)に関する視察のご報告させていただきました。
過去のブログはこちら。

公務員の仕事もコンピュータが代替!つくば市がRPA(ロボットによる業務自動化)導入!

Windows端末での操作を自動化するという取り組みです。
実現可能性も含めて、Windows端末の利用状況や、導入の可能性について質問をさせていただきました。

伊藤 区職員の業務にはWindows端末を用いたものが多いと認識しています。職員の事務作業におけるWindowsの利用状況を教えてください。また、RPAを新宿区で導入する予定はありますか。

吉住区長 区では現在、約2,600台のWindowsパソコンを事務処理用として導入し、ワープロソフトや表計算ソフトのほか、データベースソフトやグループウェアソフトを用い、各所属の様々な業務において有効活用することで、業務の合理化や区民サービスの向上に役立てています。 | Windo w s の自動化など、ロボットによる業務の自動化に関する取り組みについては、ご指摘の とおり、つくば市や民間企業において、実用化に向けた積極的な研究が進んでいます。
区においては、現時点では、RPA の導入予定はありませんが、RPA に関する研究結果をはじめ、AIを含めた先端技術の動向を注視し、自治体業務や区民サービスにおける実用性について研究してまいります。

さらに、教員の多忙化についても質問させていただきました。
新宿区では、タイムカード・タイムレコーダ等が導入されることになります。
しかし、教員の仕事自体を減らすという、根本的な問題解決も必要です。
そこで、ICTによる業務効率化とRPAについても質問をさせていただきました。

伊藤 教員の多忙化を解消するために、ICTによる業務効率化が有効だと考えています。RPAの導入が有効だと考えていますが、いかがでしょうか。

教育長 教育委員会では、平成21年度から学校のICT化に取り組んでおり、教員への一人一台のパソコンの配 備や校内LANの整備、成績管理や保健管理等の校務データの一元管理を可能とする校務支援システムの導入により、校務の効率化を図っています。
また、「だれもが、いつでも、簡単に使用できる ICT環境」をコンセプトに、より使いやすく、より教育効果の高い ICT機器を導入するなど、教員や児童・生徒が利用する教育用ネットワークシステムについても充実を図っており、教材作成やデジタル教材・授業支援システムの活用促進など、ICTが様々な場面で教員の業務の効率化に寄与しています。
ご指摘の RPA について、「自治体のRPA活用推進に向けた共同研究」を行っているつくば市に問い合わせたところ、簡易な入力作業や帳票印刷など、定型的かつ膨大な作業量が発生する単純業務の効率化には有効であること、また、作業が複雑でフロー化 が困難な業務や教育分野等への導入については、今後、さらなる課題の検証が必要であるとの見解を得ています。教員の多忙化の解消に向けた取り組みは、教育委員会においても重要な課題と考えておりますので、現在、各校を巡回している ICT支援員によるより積極的な学校ICTの有効活用に向けた助言や声掛け、先進事例や教材等の共有化を一層推進するとともに「教員の勤務環境の改善・働き方改革プロジェクトチーム」の中で今後もさらに検討を進めてまいります。

教育委員会としても、実際につくば市へ問い合わせをされたことは大変ありがたいことです。
実証実験の成果が有効だと判断されたタイミングで、ぜひ導入のご検討をいただきたいと考えています。

しかし、新たなテクノロジーが行政で導入されるかは、行政の目利きにかかっていると言えます。
スキルセットのアップデートが必要です。
例えば、京都府では、計算式を手書きして学ぶ数学や、Pythonによる機械学習プログラミングなどの職員向けの研修を行なっています。
今話題の「AI」、特にディープラーニングを含む機械学習が何なのかを理解した職員がいることは、非常に重要です。
例えば、オープンデータ等のICT関連事業についても、最新のテクノロジーについての知見があれば、どのようなデータを公開すれば良いか判断ができるようになります。

そこで、以下の質問を行いました。

伊藤 新たなテクノロジーに対応するためにも、AIに関する実務研修を行うことが有効だと考えていますが、いかがでしょうか。

吉住区長 地方自治体においても、AIの導入に向けての動きが活発化してきています。横浜市における「イーオのごみ分別案内」や、さいたま市ではAIによる「保育施設の割振り」を決める実験を行っています。 大阪市では3月より戸籍関連業務でAIを職員支援に活用すると聞いております。 「今後は、さらにAIに関する研究・実験が進められ、様々な分野でAIを活用した迅速で利便性の高 い区民サービスの提供が期待されるところです。
区としても、他自治体の動向や取組みを注視し、AIの導入による職員のスキル低下の課題や費用対効果も検証しながら、慎重に検討してまいります。
また、ご指摘の Pythonという プログラミング言語によるAIの実務研修について、エンジニア部門をよく理解できる職員に対しては有効であると考えますが、そのようなICT人材が限られていることから、他自治体のAIの活用事例やその導入効果などを検討していくなかで、ICT人材の育成に努めていきたいと考えています。

新宿区では、いまだに紙やFAXでバリバリやり取りしている状況だから当然ですが、今回の答弁は、テクノロジーの進化に追いつけていない実態そのものです。
この状況を放置することには、リスクしかありません。
答弁に「エンジニア部門をよく理解できる職員」とありますが、文系や理系、あるいは部署に関係なく、スキルセットとしてICTスキルは必要だと考えています。

人工知能が普及すると仕事がなくなると考えてしまいがちです。
直近ではRPAのようなシステムが行政に導入されることになると思いますが、業者等に丸投げするだけではうまくいきません。
行政実務とICTスキルを持った新たなタイプの職員が必要となります。
すべての職員が、未来の仕事をこなすというマインドへ切り替えていけるよう、議会やCode for Shinjukuなどの市民活動を通じて、前に進めなければなりません。

つくば市のような自治体も登場し、行政も大きな変化が始まっています。
大ヒットした「シンギュラリティは近い」の著者であるレイ・カーツワイル博士は、
「テクノロジーは、指数関数的に成長してきた。」
と指摘されています。
テクノロジーと言っても幅が広いですが、少なくともコンピュータに関しては、今後も急速に成長することが予想されます。
しかし、行政は前年比の増加量に着目し、一次関数的に事象をとらえ計画を行う傾向があります。
去年は0で今年は1だったから、来年は2、その次は3になり…と進めればよかったのが、これまでの時代です。

しかし、コンピュータの場合、去年が0で、今年は1とここまでは同じでも、勘違いしてはいけないのが、再来年は4、その次は9と急速な成長をとげることになります
議員の任期は4年ですが、例えばこの4年間に行政は0から3の一次関数的な成長があると予想します。
しかし、二次関数的なスピードで成長する現実は、例えば9になったとします。
4年間で、行政の認識と現実の実態に3倍ものさが生まれることになります。
このようになりうることに、行政も議員も、気が付いていないことが多いです。
行政の計画は3年、10年など、長いスパンの計画になる傾向があるため、テクノロジーの進化に対して柔軟な対応ができるか不安です。

つくば市のように、テクノロジーとの共存を積極的に選択し、内部でノウハウを蓄積する自治体はまだしも、新宿区が今の状況を放置すると、民間の実態と指数関数的に乖離していくだけです。
行政が何もアクションを起こさなくても、民間で新たなソリューションが登場することで、変革をせまられることになります。
結果として、わけもわからずに業者から勧められるシステムを導入していくことになるでしょう。

デジタルネイティブと呼ばれる世代だからこそ、テクノロジーの進化が区民の利益になるよう、提言を続けてまいります。

それでは本日はこの辺で。

ABOUTこの記事をかいた人

伊藤 陽平

新宿区議会議員(無所属) / 1987年生まれ / 早稲田大学招聘研究員 / グリーンバード新宿チームリーダー / Code for Shinjuku代表 / JPYC株式会社