昨日は新宿区公共施設フォーラムでした。
これまで当ブログでも重点的に取り上げてきた「公民連携」の分野でご活躍の東洋大学根本教授による講演が行われました。
根本教授のお考えはこれまでも「公民連携白書」を通じて学ばせていただいておりました。
会場には財政研でお世話になった田渕先生もいらっしゃいました。
さて、新宿区では、「公共施設白書」という資料を作成し、公共施設のあり方について検討をはじめました。
その背景として、公共施設を維持するための予算が足りないことがあげられます。
現在は少子高齢化、人口減少社会であることからも、増大する社会保障費も政治はまともに抑制することができない状況です。
予算が捻出できないため、公共施設の維持管理、運営費は年間180億円、更新費用にかかるシミュレーションでは年間13億円不足するという試算が出ています。
よく市民の立場からは、
「公共サービスって無料でしょ?」
と誤解をされてしまいがちです。
社会保障と同様、明らかに将来世代にツケが回るのになぜ事業をスタートさせてきたのかは突っ込みどころもありますが、現役世代や将来世代にとっては深刻な問題で、すぐにでも対策が必要です。
繰り返しになりますが公共施設のコストは、当然ながら空からお金が降ってくるわけではないため、誰かが負担をすることになります。
例えば、公共施設の中でも特に馴染みのある図書館にはかなりのお金がかかっていることをご存知でしょうか。
新宿区の図書館全体で11.51億円、そして貸出1件あたり1,200円ものコストがかかっています。
仮にこれが1件1,200円で利用出来る民間の図書館であれば、利用する人はどれだけいらっしゃるのでしょうか。
安い!民間でも同じサービスがあれば利用したいと思う人は少ないのではと思います。
逆に毎回1,200円支払っても利用したいと思えるほど価値を感じれば、民間でも通用するサービスだと言えます。
どちらにしろ、自分の財布からニーズに基づき直接支払いをしないと、価値判断も鈍ってしまうものです。
インターネット、そして電子書籍が登場してだいぶ時間が経っていることからも、紙の本だけ偏って投資をするということ自体そろそろ見直さなければならないでしょう。
また、図書館とは言っても、無料のコワーキングスペースのように作業や勉強のために利用されている方もいらっしゃいますが、図書館という施設でそのニーズを満たすべきかは議論が必要だと考えています。
こうして、数字を明らかにする事で、常識的な感覚からも事業を判断することが出来るようになったので、新宿区が公共施設白書を作成したことに大きな意義があります。
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フォーラムの内容は大変勉強になるものでした。
公共施設に限らず、これからは今までのような税金や政府に任せて事業を行うことはできません。
厳しい現実がたくさん待ち受けていますが、市民の知恵と工夫と思いやりをで社会を豊かにすることができる時代が到来するきっかけにしていきたいと思います。
最後に、紫波町のオガールプロジェクトの事例を引用します。
岩手県紫波町「オガールプロジェクト」 補助金に頼らない新しい公民連携の未来予想図
■「補助金やめますか? それとも人間やめますか?」
まず、「成功と言われる再開発・区画整理などの過去の地域活性化手法は、現在の社会環境には通用せず、9割9分は失敗しています」と厳しく批判したのは、木下さんだ。自治体が大型の公共事業で立派な施設を建築したものの集客に失敗、赤字となっている全国の事例を紹介しながら、問題点を指摘した。
「成長時代には、税金をぶちこんで施設開発などを行えば、それで『成功』とされてきた。しかし、今ではこれはだめです。社会が縮小して需要全体が縮んでいく中で単に公共が投資したからといって、民間がついていくわけではありません。公共は作ることが目的で、民間は儲けることが目的ですから、儲かりもしない事業を公共が率先してやって誰もこない、施設経営として損をしている状況をみた瞬間に、民間はその地域ではやはり儲けられないとわかり、民間投資は別の場所にシフトします。今後は公共は民間より先んじて、しっかりと稼げる投資をしなければ、少なくとも地域活性化には寄与しません」
それでは本日はこの辺で。